こんにちは、吉澤直晃です。
ミーティングにてブログ執筆の曜日を真っ先に選択したのは僕なのですが、社会人スタッフの都合を考えれば土曜日は譲るべきだったのか、そんな疑念うずまく現代でございます。
さて、菅野さんの記事にて言及のあった戯曲とは『聖セバスチャンの殉教』(ガブリエレ・ダンヌンツィオ著,1966,三島由紀夫・池田弘太郎訳,美術出版社)であります。
この作品は紀元後3世紀のローマを舞台にしているのですが、中世の霊験劇(神秘劇,聖史劇)の体裁をとっておりまして、さらにダンヌンツィオは19世紀末から20世紀前半の作家(発表は1911年)であると、通常より一段階多く時代を飛び越えています。また言語の面でも、イタリア人作家がフランス語で書き、また、日本語に翻訳されたものを僕は読んでいるわけで、それらの多重性が、この作品のこの作品たるゆえんに一役買っているのではないでしょうか。ローマの神々を歌う合唱を、生を投げ打ってまで拒否するセバスチャンの
「イエス、イエス、イエス、わがもとへ!」
という、キリスト教の誕生と同時に死、古代信仰の死と同時に復活をもたらす絶叫「イエス」は、上に挙げた三ヶ国語すべてに通じる固有名詞であり、喝采や断末魔と同様に意味を求めない叫びという点もはや何語でもなく、また、古代から現代まで全時代を貫く言葉でもあります。縦横の境界を「イエス」の名で爆砕すること、これはキリスト教的といえるし、聖性にこだわっていないテロル的な部分などキリスト教的とはいえず、というか、そんなカテゴライズなどおかまいのない圧倒的な力がありまして、間違いなく、すごい、すばらしい、文学だと思います。
調子に乗って読み返していたら、よい時間になってしまいました。投稿画面を開くまでは「尾崎放哉で好きな句と散文」みたいなことを書こうと思っていたのですが、うまくいきませんね。それでは、さようなら。
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